2013年09月24日

最近読んだ時代小説の感想

感想を書いておかないと細かい部分を忘れてしまいそうなので
 たまには書き残しておこうと思いました。

今日は2冊ほど紹介しようと思います。 まずはこちら。
上杉謙信 (学研M文庫)
志木沢 郁
学習研究社
2006-06


 タイトル通り、上杉謙信の生涯を描いた作品です。
特徴としては、比較的最近の説が積極的に取り入れられている感があり、
昔の謙信ものの小説と比べると展開が新鮮な部分があります。
謙信の超人的な部分や清廉さだけを強調するのでなく、彼の戦国大名としての重大な欠点などが
しっかりと描写されていたりするので、興味深かった。
今まで謙信ものの小説やドラマなどで描かれてきた謙信像とは
わりと違う捉え方をしているので、 大御所作家の描く謙信ものに多く触れてきた方でも
新鮮に読める作品だと思います。
変に神格化されているんじゃなく、ちゃんと戦国大名らしく感じられるのが良かった。

もちろん小説としても面白いし、上杉家と謙信の事情がよく分かる。
雪に閉ざされた越後から、峠を越えて関東へ進軍する苦労の描写や、
関東では雪が少ないため冬も合戦ができるということにカルチャーショックを受ける謙信、
といった色々なエピソードは、 謙信の感情が実感として伝わってきて感情移入しやすいです。
その上で、イメージ通り上杉軍のとてつもない強さもしっかりと盛り込まれているので
爽快感も味わえる内容になっています。

もったいないと思うのは、上杉謙信という 語られるべきエピソードの多い人物の人生を
文庫本一冊の尺で描いているために、ちょっと駆け足な感がある、
っていうことでしょうか。この作者の作品はそういうこと多いですけど。
なので、ちょっと読み味があっさり気味で感慨が残りにくいです。
ともあれ、文体が読みやすい上に文庫一冊なのでさくっと読めるので、
上杉謙信の小説を読みたいけど長いのは嫌、という方などにオススメかな。
この作者の文章は時代小説にありがちな文体の硬さとは無縁で、
とても平易で読みやすいので、かなり好きな作家ですし、オススメもしやすいです。
『立花宗茂』や『佐竹義重・義宣』といった作品も面白いですよ。


お次はこちら。
戦国モノ、特に織田信長を語る上で一向一揆との戦いは避けては通れないものですが、
逆に、一向一揆の指導者の側を描いた作品というのは珍しい気がします。
この作品はまさにその一向一揆の元締めである本願寺の指導者、
顕如を主人公として、主に織田信長との戦いを描いています。
この作者の作品は、本作と『浅井長政正伝』しか読んだことがないんですが
信長と宿敵としての立場で戦った人物を描くのが好きなのかな。

内容はかなり面白いです。 信長の軍団がなぜ一向衆を相手にすると弱いのか、
逆になぜ一向衆は織田軍の圧倒的な物量を前に長年にわたって抵抗することができたのか
その理由がとても納得のいく形で描かれていて、
その説得力のある解釈には 素直になるほどと思わされます。

人物描写もかなり魅力的です。
戦国ゲームをやっていると巨大な宗教勢力のリーダーとして君臨する顕如は
どこか怪物じみた印象を受けてしまいますが、この本では実に人間くさくて
家庭、特に息子との仲がうまくいかないことに悩んだり、
信長と対立したくないのに対立しなければならないことに苦悩したり、
父親として、指導者としての二重の苦労にさいなまれながら
織田軍との戦いを指導する姿をしっかり描いていて、かなり見応えがありました。
ちゃんと本願寺顕如という人物の視点の物語を楽しめる小説です。
作者の魂が込められているかのような熱い名文が随所にあり、
顕如の生き様が力のある筆致で描かれていて、没頭して読むことができました。

ただし、ちょっと微妙に思えた点もありました。
この作者の特徴なのか、前述した『浅井長政正伝』にも似たようなことを感じましたが、
簡単にいえば、武将の生き様を現代社会に照らしあわせる形でテーマを作品に込め、
読者に対して教訓的なメッセージを伝えてくるような傾向があるんですね。
で、この作品、子育てや妻との関係がうまくいかない顕如の姿を描いて
現代社会に照らし合わせる形を取っているのですが、
同時にそれが違和感を生んでしまってもいます。
例えば、顕如といえば通説では妻との関係が非常に睦まじかったことで有名なだけに、
妻との関係がうまくいかずに悩みつづけるという流れは違和感が大きかった。
テーマを込めるために一般的なイメージを歪めてしまうのはいかがなものか、と思います。

まあそれでもテーマはちゃんと物語に落とし込まれてはいますから、
童門冬二作品みたいに説教くさいわけじゃないし、
人間ドラマ中心に描かれた小説になっているので、
ちゃんとエンターテイメントとして楽しめる作品です。
雑賀孫一もかっこよくて頼りになる名脇役キャラだったし、
主要な登場人物がみんな人間として魅力的だったのが良かった。
顕如という、戦国時代に大きな存在感を発揮したわりに、詳しく描かれることが少ない人物に
興味があるのであれば、なかなかオススメできる一冊です。

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