時代小説
2015年02月28日
作家の火坂雅志氏が死去されたとのこと
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150227-00000072-mai-soci
<ここから引用>
火坂雅志さん58歳(ひさか・まさし<本名・中川雅志=なかがわ・まさし>作家)26日、
急性膵炎(すいえん)のため死去。葬儀は近親者のみで営む。喪主は妻洋子(ようこ)さん。
早稲田大卒。出版社勤務を経て、1988年「花月秘拳行」でデビュー。2007年、
直江兼続を描いた「天地人」で中山義秀文学賞。同作はNHK大河ドラマになった。
他に「臥竜(がりょう)の天」「軍師の門」など。昨年10月から入院していた。
<引用ここまで>
いや残念ですね。こんな若さで亡くなられてしまうとは。
58歳なんて時代小説のジャンルなら、まだまだこれからって歳じゃないですか。
ご冥福をお祈りしたい。
自分も氏の作品はいくつか読んでいますが、いい作家さんでしたね。
大河ドラマ化された「天地人」が有名ですし、
他にも「虎の城」など長編も色々と書かれていますが、
どちらかといえば短編の方が光るものがある作家さんだったと思っています。
ややマイナーな戦国武将ばかりを題材にした短編集「壮心の夢」は名短編ばかりで
読んだあとに感慨が尾を引く感じが、すごく好きでした。
氏の書籍の中ではこれが一番印象に残ってます。
その中でも木村吉清を主人公にした「抜擢」
赤松広通を主人公にした「桃源」の二本は
題材となった武将のマイナーさに反して、その味のある生き様が印象的で、
すごく面白かったです。
赤松広通がどれだけ領民に慕われた偉い領主だったのかを知ることができたのは
とてもありがたいことでした。もっと知名度が上がって欲しい、理想の領主と言っていい人。
よくぞこの武将を題材にして小説を書いてくれた、と強く感謝したい。
とまあ、火坂作品に関しては自分はこのくらいしか語れませんが、
とにかく惜しい作家を亡くしたものです。
マジもったいないなあ……
同時に、健康には気をつけないといけないなあ、と思わされますね。
<ここから引用>
火坂雅志さん58歳(ひさか・まさし<本名・中川雅志=なかがわ・まさし>作家)26日、
急性膵炎(すいえん)のため死去。葬儀は近親者のみで営む。喪主は妻洋子(ようこ)さん。
早稲田大卒。出版社勤務を経て、1988年「花月秘拳行」でデビュー。2007年、
直江兼続を描いた「天地人」で中山義秀文学賞。同作はNHK大河ドラマになった。
他に「臥竜(がりょう)の天」「軍師の門」など。昨年10月から入院していた。
<引用ここまで>
いや残念ですね。こんな若さで亡くなられてしまうとは。
58歳なんて時代小説のジャンルなら、まだまだこれからって歳じゃないですか。
ご冥福をお祈りしたい。
自分も氏の作品はいくつか読んでいますが、いい作家さんでしたね。
大河ドラマ化された「天地人」が有名ですし、
他にも「虎の城」など長編も色々と書かれていますが、
どちらかといえば短編の方が光るものがある作家さんだったと思っています。
ややマイナーな戦国武将ばかりを題材にした短編集「壮心の夢」は名短編ばかりで
読んだあとに感慨が尾を引く感じが、すごく好きでした。
氏の書籍の中ではこれが一番印象に残ってます。
その中でも木村吉清を主人公にした「抜擢」
赤松広通を主人公にした「桃源」の二本は
題材となった武将のマイナーさに反して、その味のある生き様が印象的で、
すごく面白かったです。
赤松広通がどれだけ領民に慕われた偉い領主だったのかを知ることができたのは
とてもありがたいことでした。もっと知名度が上がって欲しい、理想の領主と言っていい人。
よくぞこの武将を題材にして小説を書いてくれた、と強く感謝したい。
とまあ、火坂作品に関しては自分はこのくらいしか語れませんが、
とにかく惜しい作家を亡くしたものです。
マジもったいないなあ……
同時に、健康には気をつけないといけないなあ、と思わされますね。
2014年09月26日
9月に読んだ小説の感想
今月から、その月に読んだ小説の感想を軽く書いていこうと思います。
ジャンルはごちゃまぜ。
『かぶき大名』 海音寺潮五郎
戦国~江戸初期を題材にした短編集。
タイトル通り傾奇者と言えるような武士、武将を主人公にした短編が収録されている感じです。
この本に登場する武士たちは頑固だったり偏屈だったりする男ばかりで、とにかく自分を曲げない。
周囲に迷惑をかけたりもしますが、しかしそんな彼らの人生は実に魅力的でもあります。
意地を立て通す姿に男らしさを感じられるというか。
最初に収録されている表題作の『かぶき大名』は水野勝成が主人公でして、いきなり破天荒な人生を楽しめます。
気に入らないことがあるとすぐカッとなるため、暴力沙汰になって取り返しの付かない事態を引き起こし出奔、
といったことを繰り返す青年期の勝成が、老人になると逆に若者を諭す側になるのが、
あるあるって感じで面白いですね。
それ以降の作品も、一癖も二癖もある男ばかりが登場しますので読み手を飽きさせません。
短編なんですが、どれもこれも人生をしっかり描写し切っているので読み応えが濃厚です。
文体も読みやすいのでサクサク読めて面白かった。
『ならぬ堪忍』 山本周五郎
主に江戸時代を舞台にした短編集です。
山本周五郎はもう文体が非常にクールで格好良く、読んでいて酔ってしまいますが、
内容の方も、どれもこれも実に面白い。
人情や誇りを感じさせてくれる内容のものが多く、後味が良い作品が多いです。
主人公が理不尽なことに巻き込まれても、最後には胸のすく展開が用意されていたりして、
気持ちのいい気分で読める。
お家に伝わる掛け軸の扱いだとか、主君の出世のための年貢割増だとか、
エピソードによって色々な問題が持ち上がりますが、
奉公のために個人の命を捨てることもいとわない武士も多く登場するものの、
結果的には個人や弱者の尊厳が守られるような流れの話が多い。人間賛歌的な気持ちのよさがあります。
このような収録作のすべてが戦前~戦時中に書かれているものであるあたり、
作者の社会へのメッセージをなんとなく感じてしまいます。
問題点があるとすれば、清廉な主人公が多すぎて、後半のエピソードになるにつれてワンパターンに感じてくることや、
最後に収録されている『鴉片のパイプ』が作風的に浮いていて、この本に収録されるにふさわしく感じないこと、
などがあります。『鴉片のパイプ』自体は面白い作品なので編者が悪いのだと思いますが。
ともあれ、全体的には名短篇集だと思います。
『早雲立志伝』 海道龍一朗
北条早雲こと伊勢盛時を主人公に、その若き日から、相模小田原城を手中に収めるまでを描いた作品。
北条早雲と言えば、かつては身一つから大名になったと言われ、下克上の代名詞のひとりとして有名でしたが、
近年の研究で人物像が激変している戦国武将でもあります。
実は名門の出だったり、幕府の意向をかなり受けて出向してきていたとか、色々と。
この作品は、かなり最新に近い解釈の北条早雲が描かれている感じで、過去の早雲モノと比較すると
イメージが違って面白いです。
中央政府(細川政元)の後援を受け、緊密に連携を取って事を進める伊勢盛時の姿は、まさにデキる政治家って感じで、
権謀術数は駆使するものの、下克上大名としてのそれとはイメージが全然違う。
中央への根回しや周到な準備が実って、うまく対立勢力を追い落とすなどの展開は胸が熱いですね。
苦労を重ねながらも着実に大名として独立し、勢力を拡大していく様は見ていて素直に応援したくなります。
展開も説得力があり、細川政元や今川家に信頼されている理由も、すごく納得のいく感じだった。
ただ、小説として見るといまひとつ上手くないなと感じてしまう部分も目立ちます。特に構成が微妙。
この部分は面白いからもっと長く見たいのに、簡単な説明でさっと流されてしまっていてもったいない、
とか感じてしまうことが実に多かった。
なので肝心なところで盛り上がりに欠けるきらいがありますが、
それでも合戦シーンの熱さはかなりのものなので、読み応えは充分あります。
新しい早雲像を楽しんでみたい方にはオススメです。
『冴えない彼女の育てかた』 丸戸史明
同人でギャルゲーを作ろうと目論む、痛い少年を主人公にした作品。
登場するヒロインがとにかく個性的で、あんまり他の作品の誰かに似ているとか感じないのは良いですね。
人物造形が上手いと思います。
とくにメインヒロインの恵はいいですね。なぜか主人公の痛い話や行動に根気よく付き合ってくれるんですが、
主人公が期待するような可愛さや魅力が全然ないというのが面白いです。
簡単に巻き込まれてくれるチョロさがあるわりに肝心なところでノリが非常に悪いんですね。
ただ、主人公がどう思ってるかはともかく、読み手として見ると、その乗り気じゃなさそうなのに付き合ってくれるところが
見ててすごく可愛いと感じられます。地味なヒロインが好きなら、この子には萌えられるはずです。
ただし物語としては淡々としているし、それほど心動かされる展開があるでもない。まだまだ序章って感じがします。
面白くなりそうな感じはするけど、1巻の時点では盛り上がりが無いなと思いました。
『デート・ア・ライブ 十香デッドエンド』 橘公司
危険な存在である精霊の少女を、デートしてデレさせてしまおうという、
まあ大雑把に言えばそういう内容のラブコメ+バトル物のライトノベルです。
アニメやゲームはすでに手を出していたんですが、せっかくなので原作も読んでみました。
文体にあまりクセがなくて読みやすいのはいいですね。
この1巻はタイトル通り十香という少女がヒロイン。
今まで人間が問答無用で自分を攻撃してくるばかりだったために絶望している十香を、主人公がデレさせていくことになります。
明るく好奇心旺盛な十香は実に可愛い。人間社会に疎いために変な行動を取る姿は、戦闘時とのギャップ萌えが楽しめますね。
主人公は巻き込まれ型ではあるものの、やるときはやる男なので見ていてストレスが溜まらない。
終盤、真摯に十香の心を解きほぐしていく姿はなかなかのカッコよさです。
一応学園が舞台ではありますが、空中戦艦とか出てくるし学園ものの範疇には収まらない展開が多い。
1巻の時点では妹にあまり可愛げがないので、そこが少々ストレス要因になりますが、
十香が可愛いし、展開も胸が熱くなるものがあるので、
こういうジャンルの小説ならではの魅力がほどよく味わえますね。なかなかの作品です。
『獣王子の花嫁 精霊の谷に嫁ぐ姫』 みなづき志生
母親が没落したために立場の低い主人公のお姫様が、犬の頭を持つ種族「ユフト」のもとへ嫁がされることになる、という話。
ただし異種族との恋愛劇みたいなものを期待すると少々裏切られる展開でしたけど。
主人公のサミュアと、ヒーローであるティークの二人は、ともに性格が真摯で好感が持てますし、
特にティークの感情表現の不器用さは可愛げがあって魅力的ですね。
それでいてサミュアを守るときは非常にカッコイイし。
サミュアはちょっとうじうじしたところもあるけど、思いやりがあるし、この子もなかなかいい。
キャラクターは基本を押さえた感じで魅力があります。
心理描写が非常に丁寧で、キャラの考えていることがよく伝わってくるのが効いてるんでしょうね。
ただ、心理描写やキャラの過去などの掘り下げが非常に丁寧なのはいいんですが、そのせいか展開がやたらと遅く、
とにかく話が全然動かないのがネック。
まがりなりにも嫁入りの話で、冒頭で出発しているのに、まさか1巻かけて相手国に入りすらしないとは思いませんでした。
話自体もはっきり言ってよくありがちな部類で新鮮味もないし、ちょっと都合の良すぎる部分もある。
とはいえ、キャラの魅力でストーリーの微妙さと展開の遅さはある程度カバーされてはいるので、
ぜんぜん面白くないということはないです。まあまあかな。
せめて終盤でユフトの国に入ってみせてくれれば、もうちょっと話が動きが感じられたと思うんだけど。
まあこんな感じで。
挫折しなければ、しばらく続けてみようと思います。
読んだものは感想書いておかないと、忘れてしまうこともありますからね。
ジャンルはごちゃまぜ。
『かぶき大名』 海音寺潮五郎
戦国~江戸初期を題材にした短編集。
タイトル通り傾奇者と言えるような武士、武将を主人公にした短編が収録されている感じです。
この本に登場する武士たちは頑固だったり偏屈だったりする男ばかりで、とにかく自分を曲げない。
周囲に迷惑をかけたりもしますが、しかしそんな彼らの人生は実に魅力的でもあります。
意地を立て通す姿に男らしさを感じられるというか。
最初に収録されている表題作の『かぶき大名』は水野勝成が主人公でして、いきなり破天荒な人生を楽しめます。
気に入らないことがあるとすぐカッとなるため、暴力沙汰になって取り返しの付かない事態を引き起こし出奔、
といったことを繰り返す青年期の勝成が、老人になると逆に若者を諭す側になるのが、
あるあるって感じで面白いですね。
それ以降の作品も、一癖も二癖もある男ばかりが登場しますので読み手を飽きさせません。
短編なんですが、どれもこれも人生をしっかり描写し切っているので読み応えが濃厚です。
文体も読みやすいのでサクサク読めて面白かった。
『ならぬ堪忍』 山本周五郎
主に江戸時代を舞台にした短編集です。
山本周五郎はもう文体が非常にクールで格好良く、読んでいて酔ってしまいますが、
内容の方も、どれもこれも実に面白い。
人情や誇りを感じさせてくれる内容のものが多く、後味が良い作品が多いです。
主人公が理不尽なことに巻き込まれても、最後には胸のすく展開が用意されていたりして、
気持ちのいい気分で読める。
お家に伝わる掛け軸の扱いだとか、主君の出世のための年貢割増だとか、
エピソードによって色々な問題が持ち上がりますが、
奉公のために個人の命を捨てることもいとわない武士も多く登場するものの、
結果的には個人や弱者の尊厳が守られるような流れの話が多い。人間賛歌的な気持ちのよさがあります。
このような収録作のすべてが戦前~戦時中に書かれているものであるあたり、
作者の社会へのメッセージをなんとなく感じてしまいます。
問題点があるとすれば、清廉な主人公が多すぎて、後半のエピソードになるにつれてワンパターンに感じてくることや、
最後に収録されている『鴉片のパイプ』が作風的に浮いていて、この本に収録されるにふさわしく感じないこと、
などがあります。『鴉片のパイプ』自体は面白い作品なので編者が悪いのだと思いますが。
ともあれ、全体的には名短篇集だと思います。
『早雲立志伝』 海道龍一朗
北条早雲こと伊勢盛時を主人公に、その若き日から、相模小田原城を手中に収めるまでを描いた作品。
北条早雲と言えば、かつては身一つから大名になったと言われ、下克上の代名詞のひとりとして有名でしたが、
近年の研究で人物像が激変している戦国武将でもあります。
実は名門の出だったり、幕府の意向をかなり受けて出向してきていたとか、色々と。
この作品は、かなり最新に近い解釈の北条早雲が描かれている感じで、過去の早雲モノと比較すると
イメージが違って面白いです。
中央政府(細川政元)の後援を受け、緊密に連携を取って事を進める伊勢盛時の姿は、まさにデキる政治家って感じで、
権謀術数は駆使するものの、下克上大名としてのそれとはイメージが全然違う。
中央への根回しや周到な準備が実って、うまく対立勢力を追い落とすなどの展開は胸が熱いですね。
苦労を重ねながらも着実に大名として独立し、勢力を拡大していく様は見ていて素直に応援したくなります。
展開も説得力があり、細川政元や今川家に信頼されている理由も、すごく納得のいく感じだった。
ただ、小説として見るといまひとつ上手くないなと感じてしまう部分も目立ちます。特に構成が微妙。
この部分は面白いからもっと長く見たいのに、簡単な説明でさっと流されてしまっていてもったいない、
とか感じてしまうことが実に多かった。
なので肝心なところで盛り上がりに欠けるきらいがありますが、
それでも合戦シーンの熱さはかなりのものなので、読み応えは充分あります。
新しい早雲像を楽しんでみたい方にはオススメです。
『冴えない彼女の育てかた』 丸戸史明
同人でギャルゲーを作ろうと目論む、痛い少年を主人公にした作品。
登場するヒロインがとにかく個性的で、あんまり他の作品の誰かに似ているとか感じないのは良いですね。
人物造形が上手いと思います。
とくにメインヒロインの恵はいいですね。なぜか主人公の痛い話や行動に根気よく付き合ってくれるんですが、
主人公が期待するような可愛さや魅力が全然ないというのが面白いです。
簡単に巻き込まれてくれるチョロさがあるわりに肝心なところでノリが非常に悪いんですね。
ただ、主人公がどう思ってるかはともかく、読み手として見ると、その乗り気じゃなさそうなのに付き合ってくれるところが
見ててすごく可愛いと感じられます。地味なヒロインが好きなら、この子には萌えられるはずです。
ただし物語としては淡々としているし、それほど心動かされる展開があるでもない。まだまだ序章って感じがします。
面白くなりそうな感じはするけど、1巻の時点では盛り上がりが無いなと思いました。
『デート・ア・ライブ 十香デッドエンド』 橘公司
危険な存在である精霊の少女を、デートしてデレさせてしまおうという、
まあ大雑把に言えばそういう内容のラブコメ+バトル物のライトノベルです。
アニメやゲームはすでに手を出していたんですが、せっかくなので原作も読んでみました。
文体にあまりクセがなくて読みやすいのはいいですね。
この1巻はタイトル通り十香という少女がヒロイン。
今まで人間が問答無用で自分を攻撃してくるばかりだったために絶望している十香を、主人公がデレさせていくことになります。
明るく好奇心旺盛な十香は実に可愛い。人間社会に疎いために変な行動を取る姿は、戦闘時とのギャップ萌えが楽しめますね。
主人公は巻き込まれ型ではあるものの、やるときはやる男なので見ていてストレスが溜まらない。
終盤、真摯に十香の心を解きほぐしていく姿はなかなかのカッコよさです。
一応学園が舞台ではありますが、空中戦艦とか出てくるし学園ものの範疇には収まらない展開が多い。
1巻の時点では妹にあまり可愛げがないので、そこが少々ストレス要因になりますが、
十香が可愛いし、展開も胸が熱くなるものがあるので、
こういうジャンルの小説ならではの魅力がほどよく味わえますね。なかなかの作品です。
『獣王子の花嫁 精霊の谷に嫁ぐ姫』 みなづき志生
母親が没落したために立場の低い主人公のお姫様が、犬の頭を持つ種族「ユフト」のもとへ嫁がされることになる、という話。
ただし異種族との恋愛劇みたいなものを期待すると少々裏切られる展開でしたけど。
主人公のサミュアと、ヒーローであるティークの二人は、ともに性格が真摯で好感が持てますし、
特にティークの感情表現の不器用さは可愛げがあって魅力的ですね。
それでいてサミュアを守るときは非常にカッコイイし。
サミュアはちょっとうじうじしたところもあるけど、思いやりがあるし、この子もなかなかいい。
キャラクターは基本を押さえた感じで魅力があります。
心理描写が非常に丁寧で、キャラの考えていることがよく伝わってくるのが効いてるんでしょうね。
ただ、心理描写やキャラの過去などの掘り下げが非常に丁寧なのはいいんですが、そのせいか展開がやたらと遅く、
とにかく話が全然動かないのがネック。
まがりなりにも嫁入りの話で、冒頭で出発しているのに、まさか1巻かけて相手国に入りすらしないとは思いませんでした。
話自体もはっきり言ってよくありがちな部類で新鮮味もないし、ちょっと都合の良すぎる部分もある。
とはいえ、キャラの魅力でストーリーの微妙さと展開の遅さはある程度カバーされてはいるので、
ぜんぜん面白くないということはないです。まあまあかな。
せめて終盤でユフトの国に入ってみせてくれれば、もうちょっと話が動きが感じられたと思うんだけど。
まあこんな感じで。
挫折しなければ、しばらく続けてみようと思います。
読んだものは感想書いておかないと、忘れてしまうこともありますからね。
2013年12月14日
最近読んだ時代小説の感想 2
面白い時代小説を読んだので感想を。
自分は戦国時代が題材のものを好んで読んでますが、
今回のは、それよりも少し前の時代を舞台にした作品です。
嘉吉の乱と、それによる赤松家滅亡後の遺臣たちによる赤松家再興運動を描いた作品。
題材が珍しいので新鮮に読めました。
嘉吉の乱で将軍を暗殺した側である赤松家からの視点ですので、
室町幕府六代将軍・足利義教の恐怖政治に対して
赤松家側から見た怒りや不安などが描かれていて、
赤松側に感情移入しやすい描き方になっています。
将軍の暗殺というのは間違いなく悪事ではありますし、
足利将軍家の求心力がガタ落ちするきっかけになった重大事件なだけに、
普通は赤松家側が悪く書かれがちですが、
当然ながら暗殺なんていう大事に及ぶには、相当の事情があるのが当然なわけで、
そのあたりがしっかり描かれ、相手も悪いのに自分たちばかり悪党扱いされる
ということへの赤松家の人々が抱える理不尽な思いが、よく伝わってきます。
嘉吉の乱自体はプロローグ扱いで序盤のうちに済まされ、
(とはいえ乱の流れや描写はしっかりしていて、どんな戦いだったのかはよく分かります)
あとは遺臣たちの忍従と苦難の日々が描かれていきます。
赤松家再興のための道を探っていく彼らの人間ドラマが、この作品の本編です。
自分は戦国モノばかり触れてきたせいか、
赤松家って一度取り潰された割にはあっさり復興したなあ、
っていうイメージがあったんですが、
全然あっさりなんてことはなく、それはもう必死に、生き残った赤松一族たちが
家臣に支えられながら、何度も何度も再興しようと粘っていたのだということが
この作品を読んでよく分かりました。
生き残った赤松家の後継者を盛り立てようとしながらも、
失敗、敗北を重ねて次々と赤松一族は命を落としていき、
年月がどんどん過ぎていく様子を、主に主人公の小寺藤兵衛の視点で描いていくのですが、
その生活の貧しさや、失敗続きの再興運動などを見ていると、やるせない気持ちになってきます。
しかし、もうダメだという状況に何度も追い込まれながらも
かすかに再興のための希望の糸がつながっていく展開は、感動的でもありましたし、
何より赤松遺臣たちの生き様は本当に見応えがありましたから、面白かったです。
岩井三四二氏は、苦労を背負い込む人間の生き様を描くのが実に上手いなと思います。
物語終盤になると、後南朝勢力が登場し、彼らに絡んだとある事件が語られます。
ここでは、南朝勢力というものがどれだけ根強く生き残り、復権をもくろんでいたのかを
知ることができ、これもまた新鮮でした。
吉野の山奥の後南朝へと潜入するエピソードは、スパイ物みたいな緊張感にあふれていて
物語の後半からクライマックスまでを血生臭い過酷な試練で盛り上げてくれます。
エンターテイメント性もしっかりあって、読み応えがありました。
一度完全に滅ぼされた勢力を再興させるのがどれだけ大変かということが
本当によく分かる作品で、とても面白かった。
欲を言えば、この嘉吉の乱が遠因の一つになっている応仁の乱についても
この作者の筆で見てみたいなと思いました。
小寺藤兵衛やその跡継ぎたちの武将としての活躍も見られれば、
彼らの忍従の日々が報われた感が、たっぷり味わえるだろうなと思いますから。
というか正直、もうちょっとカタルシスが欲しかったというのが本音です。
ラストが結構あっさりしてるのがもったいないですし。
自分は戦国時代が題材のものを好んで読んでますが、
今回のは、それよりも少し前の時代を舞台にした作品です。
嘉吉の乱と、それによる赤松家滅亡後の遺臣たちによる赤松家再興運動を描いた作品。
題材が珍しいので新鮮に読めました。
嘉吉の乱で将軍を暗殺した側である赤松家からの視点ですので、
室町幕府六代将軍・足利義教の恐怖政治に対して
赤松家側から見た怒りや不安などが描かれていて、
赤松側に感情移入しやすい描き方になっています。
将軍の暗殺というのは間違いなく悪事ではありますし、
足利将軍家の求心力がガタ落ちするきっかけになった重大事件なだけに、
普通は赤松家側が悪く書かれがちですが、
当然ながら暗殺なんていう大事に及ぶには、相当の事情があるのが当然なわけで、
そのあたりがしっかり描かれ、相手も悪いのに自分たちばかり悪党扱いされる
ということへの赤松家の人々が抱える理不尽な思いが、よく伝わってきます。
嘉吉の乱自体はプロローグ扱いで序盤のうちに済まされ、
(とはいえ乱の流れや描写はしっかりしていて、どんな戦いだったのかはよく分かります)
あとは遺臣たちの忍従と苦難の日々が描かれていきます。
赤松家再興のための道を探っていく彼らの人間ドラマが、この作品の本編です。
自分は戦国モノばかり触れてきたせいか、
赤松家って一度取り潰された割にはあっさり復興したなあ、
っていうイメージがあったんですが、
全然あっさりなんてことはなく、それはもう必死に、生き残った赤松一族たちが
家臣に支えられながら、何度も何度も再興しようと粘っていたのだということが
この作品を読んでよく分かりました。
生き残った赤松家の後継者を盛り立てようとしながらも、
失敗、敗北を重ねて次々と赤松一族は命を落としていき、
年月がどんどん過ぎていく様子を、主に主人公の小寺藤兵衛の視点で描いていくのですが、
その生活の貧しさや、失敗続きの再興運動などを見ていると、やるせない気持ちになってきます。
しかし、もうダメだという状況に何度も追い込まれながらも
かすかに再興のための希望の糸がつながっていく展開は、感動的でもありましたし、
何より赤松遺臣たちの生き様は本当に見応えがありましたから、面白かったです。
岩井三四二氏は、苦労を背負い込む人間の生き様を描くのが実に上手いなと思います。
物語終盤になると、後南朝勢力が登場し、彼らに絡んだとある事件が語られます。
ここでは、南朝勢力というものがどれだけ根強く生き残り、復権をもくろんでいたのかを
知ることができ、これもまた新鮮でした。
吉野の山奥の後南朝へと潜入するエピソードは、スパイ物みたいな緊張感にあふれていて
物語の後半からクライマックスまでを血生臭い過酷な試練で盛り上げてくれます。
エンターテイメント性もしっかりあって、読み応えがありました。
一度完全に滅ぼされた勢力を再興させるのがどれだけ大変かということが
本当によく分かる作品で、とても面白かった。
欲を言えば、この嘉吉の乱が遠因の一つになっている応仁の乱についても
この作者の筆で見てみたいなと思いました。
小寺藤兵衛やその跡継ぎたちの武将としての活躍も見られれば、
彼らの忍従の日々が報われた感が、たっぷり味わえるだろうなと思いますから。
というか正直、もうちょっとカタルシスが欲しかったというのが本音です。
ラストが結構あっさりしてるのがもったいないですし。
2013年09月24日
最近読んだ時代小説の感想
感想を書いておかないと細かい部分を忘れてしまいそうなので
たまには書き残しておこうと思いました。
今日は2冊ほど紹介しようと思います。 まずはこちら。
タイトル通り、上杉謙信の生涯を描いた作品です。
特徴としては、比較的最近の説が積極的に取り入れられている感があり、
昔の謙信ものの小説と比べると展開が新鮮な部分があります。
謙信の超人的な部分や清廉さだけを強調するのでなく、彼の戦国大名としての重大な欠点などが
しっかりと描写されていたりするので、興味深かった。
今まで謙信ものの小説やドラマなどで描かれてきた謙信像とは
わりと違う捉え方をしているので、 大御所作家の描く謙信ものに多く触れてきた方でも
新鮮に読める作品だと思います。
変に神格化されているんじゃなく、ちゃんと戦国大名らしく感じられるのが良かった。
もちろん小説としても面白いし、上杉家と謙信の事情がよく分かる。
雪に閉ざされた越後から、峠を越えて関東へ進軍する苦労の描写や、
関東では雪が少ないため冬も合戦ができるということにカルチャーショックを受ける謙信、
といった色々なエピソードは、 謙信の感情が実感として伝わってきて感情移入しやすいです。
その上で、イメージ通り上杉軍のとてつもない強さもしっかりと盛り込まれているので
爽快感も味わえる内容になっています。
もったいないと思うのは、上杉謙信という 語られるべきエピソードの多い人物の人生を
文庫本一冊の尺で描いているために、ちょっと駆け足な感がある、
っていうことでしょうか。この作者の作品はそういうこと多いですけど。
なので、ちょっと読み味があっさり気味で感慨が残りにくいです。
ともあれ、文体が読みやすい上に文庫一冊なのでさくっと読めるので、
上杉謙信の小説を読みたいけど長いのは嫌、という方などにオススメかな。
この作者の文章は時代小説にありがちな文体の硬さとは無縁で、
とても平易で読みやすいので、かなり好きな作家ですし、オススメもしやすいです。
『立花宗茂』や『佐竹義重・義宣』といった作品も面白いですよ。
お次はこちら。
戦国モノ、特に織田信長を語る上で一向一揆との戦いは避けては通れないものですが、
逆に、一向一揆の指導者の側を描いた作品というのは珍しい気がします。
この作品はまさにその一向一揆の元締めである本願寺の指導者、
顕如を主人公として、主に織田信長との戦いを描いています。
この作者の作品は、本作と『浅井長政正伝』しか読んだことがないんですが
信長と宿敵としての立場で戦った人物を描くのが好きなのかな。
内容はかなり面白いです。 信長の軍団がなぜ一向衆を相手にすると弱いのか、
逆になぜ一向衆は織田軍の圧倒的な物量を前に長年にわたって抵抗することができたのか
その理由がとても納得のいく形で描かれていて、
その説得力のある解釈には 素直になるほどと思わされます。
人物描写もかなり魅力的です。
戦国ゲームをやっていると巨大な宗教勢力のリーダーとして君臨する顕如は
どこか怪物じみた印象を受けてしまいますが、この本では実に人間くさくて
家庭、特に息子との仲がうまくいかないことに悩んだり、
信長と対立したくないのに対立しなければならないことに苦悩したり、
父親として、指導者としての二重の苦労にさいなまれながら
織田軍との戦いを指導する姿をしっかり描いていて、かなり見応えがありました。
ちゃんと本願寺顕如という人物の視点の物語を楽しめる小説です。
作者の魂が込められているかのような熱い名文が随所にあり、
顕如の生き様が力のある筆致で描かれていて、没頭して読むことができました。
ただし、ちょっと微妙に思えた点もありました。
この作者の特徴なのか、前述した『浅井長政正伝』にも似たようなことを感じましたが、
簡単にいえば、武将の生き様を現代社会に照らしあわせる形でテーマを作品に込め、
読者に対して教訓的なメッセージを伝えてくるような傾向があるんですね。
で、この作品、子育てや妻との関係がうまくいかない顕如の姿を描いて
現代社会に照らし合わせる形を取っているのですが、
同時にそれが違和感を生んでしまってもいます。
例えば、顕如といえば通説では妻との関係が非常に睦まじかったことで有名なだけに、
妻との関係がうまくいかずに悩みつづけるという流れは違和感が大きかった。
テーマを込めるために一般的なイメージを歪めてしまうのはいかがなものか、と思います。
まあそれでもテーマはちゃんと物語に落とし込まれてはいますから、
童門冬二作品みたいに説教くさいわけじゃないし、
人間ドラマ中心に描かれた小説になっているので、
ちゃんとエンターテイメントとして楽しめる作品です。
雑賀孫一もかっこよくて頼りになる名脇役キャラだったし、
主要な登場人物がみんな人間として魅力的だったのが良かった。
顕如という、戦国時代に大きな存在感を発揮したわりに、詳しく描かれることが少ない人物に
興味があるのであれば、なかなかオススメできる一冊です。
たまには書き残しておこうと思いました。
今日は2冊ほど紹介しようと思います。 まずはこちら。
タイトル通り、上杉謙信の生涯を描いた作品です。
特徴としては、比較的最近の説が積極的に取り入れられている感があり、
昔の謙信ものの小説と比べると展開が新鮮な部分があります。
謙信の超人的な部分や清廉さだけを強調するのでなく、彼の戦国大名としての重大な欠点などが
しっかりと描写されていたりするので、興味深かった。
今まで謙信ものの小説やドラマなどで描かれてきた謙信像とは
わりと違う捉え方をしているので、 大御所作家の描く謙信ものに多く触れてきた方でも
新鮮に読める作品だと思います。
変に神格化されているんじゃなく、ちゃんと戦国大名らしく感じられるのが良かった。
もちろん小説としても面白いし、上杉家と謙信の事情がよく分かる。
雪に閉ざされた越後から、峠を越えて関東へ進軍する苦労の描写や、
関東では雪が少ないため冬も合戦ができるということにカルチャーショックを受ける謙信、
といった色々なエピソードは、 謙信の感情が実感として伝わってきて感情移入しやすいです。
その上で、イメージ通り上杉軍のとてつもない強さもしっかりと盛り込まれているので
爽快感も味わえる内容になっています。
もったいないと思うのは、上杉謙信という 語られるべきエピソードの多い人物の人生を
文庫本一冊の尺で描いているために、ちょっと駆け足な感がある、
っていうことでしょうか。この作者の作品はそういうこと多いですけど。
なので、ちょっと読み味があっさり気味で感慨が残りにくいです。
ともあれ、文体が読みやすい上に文庫一冊なのでさくっと読めるので、
上杉謙信の小説を読みたいけど長いのは嫌、という方などにオススメかな。
この作者の文章は時代小説にありがちな文体の硬さとは無縁で、
とても平易で読みやすいので、かなり好きな作家ですし、オススメもしやすいです。
『立花宗茂』や『佐竹義重・義宣』といった作品も面白いですよ。
お次はこちら。
戦国モノ、特に織田信長を語る上で一向一揆との戦いは避けては通れないものですが、
逆に、一向一揆の指導者の側を描いた作品というのは珍しい気がします。
この作品はまさにその一向一揆の元締めである本願寺の指導者、
顕如を主人公として、主に織田信長との戦いを描いています。
この作者の作品は、本作と『浅井長政正伝』しか読んだことがないんですが
信長と宿敵としての立場で戦った人物を描くのが好きなのかな。
内容はかなり面白いです。 信長の軍団がなぜ一向衆を相手にすると弱いのか、
逆になぜ一向衆は織田軍の圧倒的な物量を前に長年にわたって抵抗することができたのか
その理由がとても納得のいく形で描かれていて、
その説得力のある解釈には 素直になるほどと思わされます。
人物描写もかなり魅力的です。
戦国ゲームをやっていると巨大な宗教勢力のリーダーとして君臨する顕如は
どこか怪物じみた印象を受けてしまいますが、この本では実に人間くさくて
家庭、特に息子との仲がうまくいかないことに悩んだり、
信長と対立したくないのに対立しなければならないことに苦悩したり、
父親として、指導者としての二重の苦労にさいなまれながら
織田軍との戦いを指導する姿をしっかり描いていて、かなり見応えがありました。
ちゃんと本願寺顕如という人物の視点の物語を楽しめる小説です。
作者の魂が込められているかのような熱い名文が随所にあり、
顕如の生き様が力のある筆致で描かれていて、没頭して読むことができました。
ただし、ちょっと微妙に思えた点もありました。
この作者の特徴なのか、前述した『浅井長政正伝』にも似たようなことを感じましたが、
簡単にいえば、武将の生き様を現代社会に照らしあわせる形でテーマを作品に込め、
読者に対して教訓的なメッセージを伝えてくるような傾向があるんですね。
で、この作品、子育てや妻との関係がうまくいかない顕如の姿を描いて
現代社会に照らし合わせる形を取っているのですが、
同時にそれが違和感を生んでしまってもいます。
例えば、顕如といえば通説では妻との関係が非常に睦まじかったことで有名なだけに、
妻との関係がうまくいかずに悩みつづけるという流れは違和感が大きかった。
テーマを込めるために一般的なイメージを歪めてしまうのはいかがなものか、と思います。
まあそれでもテーマはちゃんと物語に落とし込まれてはいますから、
童門冬二作品みたいに説教くさいわけじゃないし、
人間ドラマ中心に描かれた小説になっているので、
ちゃんとエンターテイメントとして楽しめる作品です。
雑賀孫一もかっこよくて頼りになる名脇役キャラだったし、
主要な登場人物がみんな人間として魅力的だったのが良かった。
顕如という、戦国時代に大きな存在感を発揮したわりに、詳しく描かれることが少ない人物に
興味があるのであれば、なかなかオススメできる一冊です。
2013年04月10日
好きな時代小説について
自分はエロゲーやアニメ以外の趣味としては、時代小説を読むことに
割く時間がかなり多いのですが、今日はそれについて色々語ってみようと思います。
時代小説というと堅苦しい感じもしますが、実際はエンターテイメント性の
高いものが多いですし、自分が何よりもいいと思うのは、
時代小説はバッドエンドな作品も普通にあるっていうことですね。
実在の人物の人生を描いているわけですから、そういう展開のものもあるのは当然なわけで。
だから色々な読み味のものが楽しめるのがいいですねー
それに人生だから味わい深さもありますし。
まあそのへんは作者の力にもよるんですけども。
いろんな人物の話が楽しめるのもありますが、
同じ人物、たとえば信長や家康の話であっても、作者によって人物の解釈が違うので
いくつ読んでも飽きないのもいいです。
そんなわけなので、自分は架空の人物しか出てこない時代小説は敬遠する傾向にあり、
あくまで実在の人物を扱ったものを好んで読んでます。
今日は特に好きな作品をいくつか挙げてみたいなーと思います。
すべて戦国時代を舞台にした作品になります。
まず初めて没頭して読んだ時代小説がこれ
四国の雄である長宗我部元親を主人公にした作品です。
実際読むと奥さんの視点が多いですが。
元親が苦労を重ねて土佐、そして四国を統一していく過程がじっくり描かれ、
後半になると秀吉の力の前に忍従することになるのですが、
元親が傑物であることが描かれると同時に、
とにかくやるせなさが伝わってくるストーリーになってます。
後半になればなるほど、なんとも言えない虚しさに胸を打たれる。
慎重に慎重を重ねて策謀を練り領土を広げていく元親の武将としての活躍など
見どころは多いですし、その人生がじっくり描かれているわりに文庫本2冊という
読みやすいボリュームにまとめられていて、手も出しやすいです。
時代小説を読んだことがない人にオススメするなら、この作品が個人的に一番オススメですね。
それにしても司馬遼太郎という作家は膨大な数の作品を書かれていますが、
とにかく濃密で読み応えのある作品ばかりなので、この作家だけ読み漁るだけでも
時代小説の楽しさは充分に味わえるくらいです。すごい人ですね。
次にこれ。
「花の慶次」というタイトルの漫画版のほうが有名でしょうね。
この作品、原作である小説が自分はそれはもう好きで、
文庫版をボロボロになるくらい読んでます。何度読んだか分からない。
これをカバンの中に入れておけば、暇な待ち時間とかはいくらでも潰せる!
漫画と同様に、この作品はとにかく慶次郎の快男児ぶりがいいですね。
自由で粋で、何ものにも縛られずに生きたいように生きるという姿には憧れるばかり。
読んでいて気持ちのいい作品でした。
そして隆慶一郎という作家は、とにかく文章が読みやすくてエンターテイメント性が高いので
時代小説にありがちな硬さがまったく無くて、感情移入しやすいのがいいと思います。
表現力も素晴らしく、登場人物の人間的魅力、物語の面白さを素直に楽しんでいけます。
漫画版では描かれていない細かな部分もあり、展開が違う部分もありますし、
読み比べてみるのも面白いと思います。漫画版ともども全力でオススメの1作ですね。
最後にこれを。
戦国武将というのは当然ながら陸に生きていた人ばかりでなく、
水軍を率いていた武将も大勢いますが、この作品は
その中でもトップクラスの知名度を誇る、九鬼嘉隆を主人公にした小説です。
志摩統一の苦労や九鬼家の家督など、血なまぐさく壮絶な生き様が描かれていて
飽きずに読み続けさせてくれる面白い作品。
帯に書いてある通りに織田信長との出会いを転機にして、
志摩の一海賊だった嘉隆が覇者の水軍として活躍していく過程を楽しんでいけますが、
苦労、挫折、達成感などがバランスよく盛り込まれていて完成度の高い小説ですね。
文庫本一冊でまとまっていますが中身が濃いので満足度が高かったです。
白石一郎という作家は海に生きた男たちを描かせたら一級品でして、
ほかにも小西行長を主人公とした『海将』なども面白いです。
海戦シーンをはじめとした海上での描写のリアリティは見事なもので、
作者のこだわりと知識量を感じさせてくれます。
陸の上で駆けた武将たちとはまた違った、海の男たちの生き様を楽しませてくれますね。
特に好きな作家の一人です。
そんな感じで、好きな作家からそれぞれ1作品ずつ挙げてみました。 なんか読みやすくまとまった作品ばかりになってしまった気がするけどまあいいか。 ちなみに山岡荘八や吉川英治みたいな長大な作品を書く作家も好きですよ。 自分は病院にいく機会が多いので、時代小説はその時間に読むことが多いんですが 時代小説のおかげで暇を感じることがなくていつもありがたいです。 今後もいろいろな作品を読んでいきたいなと思います。 あとは隆慶一郎への思い入れについて長々と書いておきたいなあ。次はそうしよう。 余談ですが、Amazonアソシエイトって画像を貼るのに便利ですね、 こういう小説について感想を書く時なんかには特に重宝するなあ……
そんな感じで、好きな作家からそれぞれ1作品ずつ挙げてみました。 なんか読みやすくまとまった作品ばかりになってしまった気がするけどまあいいか。 ちなみに山岡荘八や吉川英治みたいな長大な作品を書く作家も好きですよ。 自分は病院にいく機会が多いので、時代小説はその時間に読むことが多いんですが 時代小説のおかげで暇を感じることがなくていつもありがたいです。 今後もいろいろな作品を読んでいきたいなと思います。 あとは隆慶一郎への思い入れについて長々と書いておきたいなあ。次はそうしよう。 余談ですが、Amazonアソシエイトって画像を貼るのに便利ですね、 こういう小説について感想を書く時なんかには特に重宝するなあ……